Flashback Japan x Video Copilot present【Video Copilot セミナー 2014】レポート2014年5月29日 (木)、After Effects プラグインの開発元 Video Copilot 社の創立者、Andrew Kramer (アンドリュー クレイマー) 氏を迎え開催した【Video Copilot セミナー2014】が大盛況をもって閉幕しました。 セミナーが終了した時、会場にいた多くの人達がみな立ち上がって、Andrew 氏に惜しみない拍手を贈り続けてくれました。 そんな感動の瞬間を生み出してくれた Andrew 氏、登壇頂いた佐藤氏、司会進行の緒方氏、そして来場頂いた多くの日本の映像クリエイターの皆様方、運営をお手伝い頂いた方々、全てのみなさまに改めて感謝を申し上げます。 オープニングお馴染みの「Hey ! What's up ! Andrew Kramer here !」と登場してくれた Video Copilot の Andrew 氏。会場のAE使いのみなさま方は、この台詞にしっかり反応して頂きました! この生 What's up ! と 生チュートリアルを聞くためにわざわざ来場頂いたクリエイターの方々も少なくないでしょう。そして、その生 Andrew 氏からは、みなさまの期待に応える熱い意気込みがビシビシと伝わってくる熱気あるセミナーとなりました。 尚、司会は【Effect Recipe】でもお馴染みの緒方達郎氏。またもう一人のゲストとして、アメリカ、プロローグ・フィルムズにて映画のタイトルシーケンスやCMのビジュアルグラフィックスを手掛けてきた佐藤隆之氏をお迎えしました。 セッション1:佐藤 隆之 (TAKAYUKI SATO a.k.a OTAS)はじめのセッションにご登壇頂いたのは、佐藤隆之氏です。 佐藤氏は、アメリカの映像プロダクション、プロローグ・フィルムズにて、映画「オブリビオン」(タイトルロゴとエンディング)、「G.I.ジョー バック2リベンジ」(オープニング)などの映像を手掛けられてきたほか、多数のビジュアルエフェクツ、テレビコマーシャル、番組用グラフィック制作をされています。 今回、佐藤氏には、Video Copilo 社製品を使って、本セミナーのキービジュアル&トレーラーを作成頂きました。セッションは、まずこのキービジュアル&トレーラーの制作過程のご紹介です。 佐藤氏は、限られた制作期間内で完成させるため、Video Copilot 社の既存の3Dモデルや素材、プロジェクト、サウンドを使いながらも、それらを絶妙に組み合わせることによって、クオリティの高いオリジナリティのある映像世界を生み出しています。 セミナーのメインビジュアルに使用している地球は、Element 3D で描画。その3Dモデルは、Video Copilot 社のブログで紹介されている無償プロジェクト【Free Earth Project for Element 3D】を活用したものです。 この Element 3D で作成された地球は、After Effects のライトを当てて影を描画しています。太陽の光は Optical Flares 。隕石や惑星の3Dモデルは、Element 3D に同梱される Starter Pack を活用しています。 また宇宙船は、Motion Design Pack の中の Greeble を活用しました。このグリーブルは、表面が複雑な形状になっている3Dモデルです。このモデルに追加したテクスチャは、全く別の Metropolitan に収録されるビルのモデルのテクスチャを再利用したものです。追加したオブジェクト自体は消して、読み込まれたテクスチャだけを使っています。 この3Dオブジェクトは、そのままの状態ですと宇宙船らしくありませんが、ライティングなどを工夫することで最終的にトレーラーのような実在感のある宇宙船に見えるよう仕上げられています。 佐藤氏は、作業時間に制約がある時は、このようなカメラから見た画作りに集中することで全体のクオリティを高めています。 ほか、トレーラーには、音源として Pro Scores が、音響効果に MotionPulse が活用されています。 また Video Copilot 社以外のツールでは、Sapphire のワープクロマを使用しています。この効果は、一見気付かない程度に目立たなく使用されていますが、その僅かなクロマの効果がリアル感を増します。このワープクロマは、映画バトルシップで佐藤氏が手掛けた全てのショットにも活用されています。 更にカラーグレーディングは、After Effects プラグインの Magic Bullet Looks を使っています。 尚、佐藤氏が Video Copilot のチュートリアルを見ていて感動するのは、フラクタルノイズの使い方が本当にうまいことだそうです。Video Copilot のブログでは、このフラクタクルノイズを使って作る星雲や太陽の周囲の炎など様々な活用法が紹介されてます。 セッションは続いて、【The Moment of Beauty】チュートリアルの番外編【The Moment of Beauty】チュートリアル最終章/第五章をご紹介頂きました。 佐藤氏は、2014年、独自プロジェクトの映像作品【The Moment of Beauty】を発表。この制作の模様は、弊社のWebサイト、佐藤隆之氏による After Effects プラグイン解説【世界観を創る!プラグイン活用術】にて公開中です。 この番外編は、カメラが大きく動いてシーンが移り変わる場面展開のショットの作成方法の紹介になりました。 このシーンに活用したツールは Cinema 4D。基本3Dのカメラのセッティングは、After Effects のみよりも、3Dのソフトを活用した方がテストを行いやすくスムーズとのこと。ここで管理しているのが、カメラの動きと、地面となる円盤のポジションになります。 ポイントは、Cinema 4D で作ったオブジェクトに追加する外部コンポジットタグです。この Cinema 4D のシーンデータを After Effects 読み込む (Extractする) ことで、Cinema 4D のカメラとオブジェクトのポジションデータを、ヌルとして活用できます。このヌルに After Effects で作成したグラフィックを一つ一つリンクさせることで、Cinema 4D の動きにマッチしたシーンを形成しています。 この手法は、2010年の映画アイアンマン2をはじめ様々なお仕事で活用しています。 また、実際の4Kの収録素材とビジュアルエフェクトの合成シーンを紹介頂きました。 撮影したグリーンバックのショットは、そのままのポジションで使うのではなく、After Effects の中できちんとポジショングしてあげることで、面白い映像に仕上げることができます。 セッション2:Andrew Kramer (Video Copilot) 其の一そして2つ目セッション、Andrew Kramer 氏の登場です ───! Andrew 氏は、ビジュアルエフェクトアーティスト、フィルムメーカーとして数多くのスタジオで活躍しながら、Video Copilot (ビデオコパイロット) 社を創設。同社の After Effects プラグインや映像素材集などの企画、プロデュースを手掛けながら、自ら作成した ハイレベルな映像作品の無償チュートリアルをブログにて公開する世界的に注目される After Effects のカリスマ的アーティストです。 クリエイターとしての Andrew 氏は、ハリウッドの大作映画【Star Trek Into Darkness (スター・トレック イントゥ・ダークネス)】のタイトルデザインなどを手掛けられています。 Andrew 氏 の登壇により、会場のテンションは一段とアップ! セッションは、まずは自身の経歴紹介から始まりますが、ジョークをまじえながらの絶妙なトークに、会場が沸きます!とにかく会場に来てくれたみんなさんが楽しんでくれるように真摯にユニークにトークする Andrew 氏に、会場のクリエイターさんの反応もとても熱かったです。 Andrew 氏がおよそ12年前、高校生の頃に作った映像作品を紹介頂きました。 また自身の家族の紹介では、日本のみなさんを喜ばせる仕掛けもあり!(右の写真です!) 後の Q & A セッションの話題になりますが、氏にとって一番大事なものは?という質問に、「家族」と即答 ───。その言葉に会場からは大きなため息が〜。 ご本人は誰にも増して忙しいはずなのに、はっきりとそう名言される姿勢が本当に格好いいです。紹介してくれた家族写真からは、それが有言実行であることがジンジン伝わってきました。ちなみに現在、2姫1太郎のパパです。 お待たせしました! 電子回路を走る電流のイメージの作成 まずは、テレビドラマ「Almost Human」でAndrew 氏が作成したタイトルシーンから、目の中にカメラが飛び込むと、その瞳に電子回路が映り込むマクロショットの作成方法の解説です。 このショット、複雑に交わる電子回路を走る電流のイメージ (しかも異なる色、スピード) のパターンをマスクを使って作成した場合、膨大な時間が掛かると想定されます。そこで、この電子基板での電流の動きをシュミレートするプラグイン「Circuitry (サーキュットリー)」を開発したそうです。 Circuitry を四角形のシェイプに適用すると、そのシェイプエリアに電子回路が描画されます。このマイクロチップのジリスター(抵抗器)、メインチップ、それを繋ぐ回路の数、回路を走る光、それらの色やスピード、ランダムの調整などを自由にカスタマイズし、アニメーションできます。 作りたいイメージを美しく且つ効率よく仕上げるために、プラグインを開発するという姿勢が流石です。尚、この Circuitry は現在、発売や配布の予定は未定です。 またここで作成した回路を瞳にマッチさせる際は、極の調整に After Effects の既存エフェクト、ディストーション>極座標 (polar coordinates ) と、回路の複製配置にスタイライズ>モーションタイルを活用しています。 カメラを通して現実世界を観察しよう 同じく「Almost Human」のタイトルシーン、透明の容器の中にインクのような液体が注入されるショット、こちらは実際に花瓶にインクを注入した実写映像を活用したそうです。 Andrew 氏は、このような撮影した映像をCGと合成する際に心掛けているのは、合成した映像が、実際の現実世界にあるように違和感なくリアルに見えているかということです。 氏は、VFXやモーショングラフィックスを制作するアーティストだとしても、実際にカメラを通して見える対象を観察し、例えば絞りやライティングの違いによってどう変わるかなどを知った上で合成することが結果的にとても大切になると力説されていました。 自然な彩度で着色するプラグイン「Color Vibrance」 実写で撮影したインクのショットを「Color Vibrance (カラー バイブランス)」で着色するデモンストレーションです。 この Color Vibrance は、モノクロイメージの白いエリアを、より自然な彩度を持つカラーに着色するプラグインです。 通常の After Effects の色相・彩度の効果を使った着色は、明るい部分と暗い部分で同じ色が乗るため平坦な色合いになってしまいます。しかし Color Vibrance は、同じ一つのカラーでもシャドウ部分やハイライト部分で若干異なるカラー (例えば暖色系の着色の場合、シャドウ部分は暗い赤、ミッドトーンはオレンジ、ハイライト部分は光っているような黄色) で着色し、現実に近いより自然な彩度を持つ鮮やかな色合いを表現できます。 この効果と同じことをトーンカーブで行うには大変な時間を要してしまいますが、Color Vibrance なら1クリックです。更に黒いエリアを抜いたマットを自動生成し、着色部分だけの合成を手軽に行うこともできます。 なんとこちらのプラグインは、Video Copilot 社の好意により、無償にて配布しています。どなたでもご利用頂けますので、ダウンロードされていない方はぜひチェックしてください。 素材を使う時は、手を加えてオリジナル感を出す 先の Color Vibrance は、Video Copilot 社のパーティクルエフェクトの素材集【Shockwave】のカラーの調整を最適に行うために開発されたプラグインです。 この Shockwave の素材を使用して、銃を Sci-Fi (science fiction) モードに切り替えて発射するビーム砲のイメージの作成方法が紹介されました。 ポイントは素材をそのまま使うのではなく、ちょっと手を加えてオリジナル感を出すことです。 まず放射状に広がる Shockwave のパーティクルを、ディストーション>極座標で、上下に伸びる直線ラインに加工します。 更にディストーション>トランスフォーム (スケール高さ:-100)で上下を逆転。この状態でプリコンポしたものに極座標をもう一度掛けると、爆発が逆方向のバージョンができます。 このパターンを放射状に発するパーティクルと組み合わせることで、全く見た目の違う、新しいデザインのパーティクルを作成することができます。 調整レイヤー、そしてスタライズ>モーションタイルでパーティクルを複製。この複製の数、パーティクルのスケール等を変更することで更に様々なパターンを生成できます。 Shockwave を用いたマズルフラッシュの作成 Shockwave のパーティクル に、遠近>CC Cylinder を適用し、パーティクルをシリンダー状に変形。ここに極座標を掛けて形状を変化させると、シリンダー状に放射されるパーティクルができます。更にトランスフォームなどの効果を加えれば、スタイルの幅も一段と広がります。 タイムリマップでスピードを変化、複製して重ねたり様々に工夫することでまた違う表現が行えます。CC Cylinder に回転のキーフレムを打てば、ねじれながら放射されるパーティクルアニメーションの完成です。 映像素材をそのまま使うことなく、After Effects の既存エフェクトもきっちり使いながら手を加え、次々と新しいスタイルを生み出していく Andrew 氏の考え方とデモンストレーションに会場から思わず拍手が上がります。 尚、銃から放射される際の空気の歪みは「Heat Distortion plug-in」を活用。この歪みでレンズの焦点が合っている部分と、合っていない部分ができていることに注目してください。 Andrew 氏繰り返し曰く「CGと実写の合成には、それがリアルに見えているかを常に意識しています」 また、銃を発射する際の光には、レンズフレア作成プラグイン「Optical Flares」をお忘れなく ! ブレイクタイム開幕前、休憩時間、そして閉幕後、 Andrew 氏の前には常に長い人の列ができていました。Andrew 氏は、それに面倒がることもなく、その一人一人とにこやかに接し、語り合い、握手をし、一緒に写真を撮る。Andrew 氏は、本当に気さくで、ユニークで、サービス精神旺盛な方なのです。 なんていい兄貴〜と思っていると実は29歳の若さ!この Andrew 氏の人柄が、満員の来場者にもつながっているのでしょう。 セッション2:Andrew Kramer (Video Copilot) 其の二そして、みなさまおまちかね、Element 3D V2 がお披露目されました ───! なんと Element 3D v2の機能は、世界初公開です。 残念ながら、今回、実際のデモンストレーションのビデオはご紹介できないのですが、紹介があったいくつかの機能をご紹介致します。 新しいインターフェイス 右の画像は、Element 3D バージョン2のインターフェイスです。 SSS(サブサーフェイス スキャッタリング/Subsurface Scattering)の対応 Render Setting に Subsurface Scattering が追加。SSSは、オブジェクトの内部に入った光の散乱をシュミレートする機能です。例えば大理石や肌などで、光源がオブジェクトを透き通って光るような半透明の質感をリアルにレンダリングします。しかもリアルタイムプレビューされます! 画像は、ラズベリーのモデルでのSSSのデモンストレーションです。これまで以上に、よりリアルで美しい3Dのオブジェクトの表現ができるようになります。 ドロップシャドウの対応 Render Setting に Shadows が追加。シャドウ機能が強化されます。After Effects のライトの状況に応じた、3Dオブジェクトのドロップシャドウがよりリアルに再現されます。ハードシャドウ、ソフトシャドウといった設定も可能です。 右の画像は、SSSの半透明レンダリングを有効にしつつ、AEライトに応じたドロップシャドウが掛かったイメージです。このような描画が After Effects 内で完結できてしまうことは本当に嬉しい驚きです。 ダイナミックリフレクションの対応 Render Setting に Reflection が追加。リフレクション、鏡面反射の機能が強化されます。3Dオブジェクト同士の反射にも対応します。 画像にあるような倉庫も、Element 3D で作成したものです。 この倉庫の床、そしてランボルギーニのボディの美しいリフレクションにご注目ください。 画像は、このランボルギーニを倉庫内で走らせているところです。このリフレクションのアニメーションもリアルタイムプレビューに対応します! ランボルギーニの足下、タイヤの部分にご注目ください。このような水の反射の表現も可能です。 また ランボルギーニの上、フロント部分をご覧ください。After Effects 上の2Dオブジェクト (平面レイヤー) を、Element 3D の3Dモデルに反射させています。 3Dオブジェクトの変形 3Dオブジェクトの変形機能が追加されます。 セミナーでは、3Dテキストや球体を曲げたり、ねじったり、凸凹に膨張させたりと、変形を実演してくれました。 グループの無制限化 一つのレイヤーに複数のElement 3Dの効果を追加して、3Dオブジェクトを無制限に重ねることができるようになります。これまで5つだった3Dオブジェクトのグループの制限がなくなります。画像は、倉庫と2つの球体の 3つの Element 3D を重ねたプレビューです。 ほか CINEMA4D や OBJファイルのインポートの簡略化など。ほかにも新機能を予定しているとのことです。 さて、この Element 3D バージョン2の発売時期ですが、現時点では未定となります。フラッシュバックジャパンでは情報の公開が解禁され次第あらためてご案内致します。どうぞご期待ください! Andrew Kramer 氏との Q & A セッションセッション終了後は、Andrew Kramer 氏への Q & A セッション。事前にクリエイターの方たちに募った Andrew 氏への質問から、特に要望が多かったものをうかがいました。 また当日来場頂いたクリエイターの方の数名に、Andrew 氏へ直接質問をぶつけて頂きました。こちらも大変盛り上がりました。質問して頂いた方ありがとうございます! サプライズの一つが、Element 3D のプログラマー、セルジオ氏の登場です! そして大団円!セミナー終了時、いつまでも続くスタンディングオベーションは、冒頭にご紹介した通りです。 尚、800席を超える会場は満席御礼となりました。お忙しい中、駆けつけて頂いたクリエイターの皆様に重ね々感謝であります。 NABの Adobe 社の講演でも一番の観客動員をほこるという Andrew 氏。 あらためて、今回は非常に多くの方にご来場頂き、大盛況のもとセミナーを開催することができました。皆さまのご支援とご愛顧、厚くお礼申し上げます。 |