【世界観を創る!プラグイン活用法】第三章 光と面で世界を彩る

世界観を創る!プラグイン活用術

佐藤隆之氏による After Effects プラグイン解説・全四章

〜 The Moment of Beauty チュートリアル 〜

 
第三章 光と面で世界を彩る
 

光あれ ───!
アーティストが新しい世界を創り出す
世界を彩る光と面

モーショングラフィックス・VFXアーティスト 佐藤隆之氏の作品【The Moment of Beauty】の創作過程を紐解く解説の第三章 ───
今回、注目するのは、繊細な作品の世界観をより美しく飾る光、そして面、2つのオブジェクトだ。


この光は、Video Copilot 社のレンズフレア作成プラグイン【Optical Flares】が。水面のような面は、ポリゴンメッシュの3Dシェイプを作成するプラグイン【Trapcode Mir】を使って生成されている。


佐藤氏はこれらメジャープラグインを使って、自身の映像作品をどのように構築していくのか? 
佐藤氏が見出したプラグインの活用法を紹介する。

 

#07 Trapcode Mir の面で世界観を彩る

【The Moment of Beauty】の作例シーンで、うっすらと見える波と布を合わせたような地面のイメージが、Mir で作成されたオブジェクトだ。本解説ではこの作成方法を紹介する。


Trapcode Mir とは、一体どんなソフトか。同じ Trapcode 社の Particular や Form は、パーティクル、粒子をベースした形状を生成するが、Mir は粒子を使わない。Mir は、ポリゴン、サーフェスベースの形状を生成するプラグインである。そんな Mir の利点は、なんといっても描画の速さだ。Particular のように、粒子が一つ一つ飛び散るようなアニメーションはできないが、布のような面の描画を非常に高速で行うことができる。


佐藤氏は、この布や液体のような効果は、Particular や Form、または3Dソフトで行う場合、それなりの作業とレンダリング時間を要するが、Mir は同様の描画を比較的簡単に行うため、シーンよっては大変使い勝手がよいと分析する。布や液体をイメージさせるちょっとした面の効果ならば、After Effects と Mir で簡単に作れてしまうわけだ。Mir は面の生成を手軽に実現するだけでなく、作業時間の短縮に大きく貢献することがわかる。

 
Trapcode Mir の面で世界観を彩る 作例1

まず生成した Mir のオブジェクトを作例のシーンに反映させる。
Geometry>Position X, Y、共に0,0。Geometry>Rotate X の0を90に。Mirで作成した面が、シーンの地面に対して水平になる(図1)。


この Mir のオブジェクトを、画面一杯に広げる。Geometry >Size X, Yの値を増やすと、面がXY方向へ広がる(図2)。
今回は使用していないが、Geometry>Bend X,Y で平面を曲げる表現ができる(図3)。
この面の凹凸の具合は、Geometry >Vertices(頂点)X, Y で調整。この値を増やすと、頂点が増え、一つ一つの面が細かくなる(図4)。

 
Trapcode Mir の面で世界観を彩る 作例2

この凸凹の面を、柔らかい布のようにしてみよう。
Fractal>Amplitude(振幅>起伏の高さ)初期設定50を75に少し上げる。
Fractal>Frequency(頻度>起伏の頻度)初期設定800を120に下げる。
今回はやや大き目で滑らかな波のような起伏とした。これで大分布らしくなった(図5)。


この起伏に動きを持たせるパラメーターが、Fractal>Evolution 。Evolution の値を変えてキーフレームすることで、うねりの効果を継続的に与えることができる。


更に、Fractal>Complexity(複雑さ、複雑性)を少し上げる。これで波の質感が一段階細かくなった(図6)。

 
Trapcode Mir の面で世界観を彩る 作例3

続いてシェーダーを調整。Shader>Shader>Density(密度)をPhong(フォン)にすると見た目が固く、くっきりする(図7)。尚、Flat は、ポリゴンで生成されたイメージになる。


Material(マテリアル)>Color でカラーを暗い青を選択。この Mir のイメージは、単体のレイヤーだけで見るとかなり暗い状態だ(図8)。これは、最終的に Mir のイメージにレンズフレアを重ねた状態で丁度よい明るさにするためである。


Texture(テクスチャ)は、今回は使用していない。ここにテクスチャを割り当てて、布のような効果を加えると、見た目美しい動画ができる。
Repeater(リピーター)も今回は使用していない。オブジェクトを複製して増やすことができる。


そして最後に Visibility(可視度)。これは、オブジェクトと背景の境界となる白い部分を調整する機能だ。Visibility>Fog Color の白を今回のシーンの背景にマッチするように黒を選択する。更に境界のエッジを滑らかにするため、Visibility>Fog Start でグラデーションの開始位置を手前に近づけた。これでオブジェクトの手前と奥の間のグラデーションが滑らかになった(図9)。


これにレンズフレアのレイヤーを重ねる。本解説では、効果を判りやすくするため、更にカラーコレクションを重ねて、Mir のパートは終了とする(図10)。
今回 Mir は、波ようなエフェクトというコンセプトで使用しているが、これに留まらず様々な世界観やオブジェクトを作ることができるので、いろいと試して頂きたい。

 
※配布する本サンプルプロジェクトは、製品の使用時の参考としてご利用頂けます。複製、及び転用、販売、公開、譲渡などはできません。
 

#08 Optical Flares の光で世界観を彩る

Optical Flares は、After Effects 上でリアルなレンズフレアを生成しアニメートする Video Copilot 社の人気プラグインだ。


【The Moment of Beauty】の作例シーンには、3レイヤー分の Optical Flares が存在している。一つ目、女性の手元から離れて光る Light Ball。二つ目、シーン全体の雰囲気を作る Atmosphere。三つ目、女性の足下から一直線に伸びる光の球 Ground Light だ。


一つ目の Light Ball。元となるレンズフレアは、佐藤氏は意外にもデフォルトで搭載されたプリセットをそのまま活用している。Optical Flares>Option>Preset Browser から今回選んだのは、Motion Graphics>Monster Flare。


Optical Flares のレンズフレアは、もちろん一から自分で作成することも可能だが、佐藤氏は、基準のプリセットを選んだ後にカスタマイズしてスタイルを作ることが多いようだ。ただしプリセットをそのまま使うのは、フレアを小さく使った時のみ。大きく使う際は、レンズのパーツごとにアーティストの好みで選択した方がよさそうだ。尚、カスタマイズは、HIDEで隠したり大きさを変更するなどで対応する。

 
Optical Flares の光で世界観を彩る 作例1

Optical Flares で作成した一つ目のレンズフレアを、シーンの Light Ball のポジションに当てはめてみよう。
Positioning Mode>Source Type から3D(3Dカメラの設定に合わせる)を選択。この3Dで配置をする場合、3Dカメラのアングルによってフレアの位置が変わるため、フレアが求める位置に来るよう調整を行う。


調整方法は何種類かあるが、佐藤氏のやり方は、Optical Flares>Position X,Y のキーフレームボタンを、オプションを押しながらクリック。Optical Flares のタイムライン上にエクスプレッションの設定が開く。そのエクスプレッションの渦巻きのマーク(エクスプレッション ピック ウイップ)を、Cinema4Dから書き出した Light Ball のポジションにリンクさせる(図1、2)。Optical Flares>Position Z も同様に行う。すると Light Ball の中心、ヌルの中心にレンズフレアが乗った状態になる(図3、4)。


Brightness 100を25に。Scale 100を75に。いらないパーツを HIDE で消して一つ目の Light Ball のフレアができる。

 
Optical Flares の光で世界観を彩る 作例2

二つ目のレンズフレアは、Atmosphere(雰囲気、大気)。このレイヤーでは、3つの Optical Flares を重ねている(図5)。


Positioning Mode>Source Type は2Dのまま。2Dはあくまでも2Dの平面上にレンズフレアを置いてあるだけなので、レンズフレアはキーフレームで動かした通りに動く。
この Positioning Mode を3Dにすると、レンズフレアは、3Dのカメラの動きに応じても動いてしまうため、佐藤氏は、画面に固定のレンズフレアを置いておきたい時は、これを2Dのままにするといった使い分けをしている(図6)。


尚、一つのレイヤーでレンズフレアを重ねる場合は、Motion Blur の下にある Render Mode を、一番上にあるレンズフレア だけ On Black、それ以外は Over Original に設定する。これによって描画モードのスクリーンと同じ状態が得られる。

 
Optical Flares の光で世界観を彩る 作例3

三つ目のレンズフレアは、地面中央に伸びる光の球、Ground Light。Positioning Mode は Track Light。


Optical Flares の効果を限定したレイヤーのみに反映させたい場合は、Positioning Mode>Track Light Option>Select Light を On にし、Name Starts With を E にすると、Eのレイヤー名ではじまるライトのみに Optical Flares の効果を反映できる。この連なった光が増えていくアニメーションは、Cinema4Dで生成したライトを使って、After Effects で1つ1つを見た目通り増えるアニメーションを行っている(図7)。(ライトの設定の詳細については、本解説の第一章を参照ください。)


各ライト光の強さ、Intensity にキーフレームを打つ。Positioning Mode>Track Light Option>Use Light Intensity をチェック (オンに) すると、Light の Intensity が反映される。そのままパッと光っているのは面白みがないので、Wiggle を掛けて、若干点滅をさせているようなイメージに仕上げている(図8)。
佐藤氏のこのようなちょっとした仕掛けの積み重ねが最終的に臨場感のあるイメージを創り上げるのだろう。


Positioning Mode>Track Light Option>Use Light Color をチェック (オンに) すると、Light のカラーを反映できる。Color Mix で濃度を調整できる。解説では参考に一つだけカラーを変更してみた(図9)。


このように作成した3つの Optical Flares を重ねて、このシーンのレンズフレア効果は完成とした(図10・効果を判りやすくするため、実際の作品よりも明度を高めた画像で紹介している)。


尚、Optical Flares の基本操作は、緒方達郎氏解説 Effects Recipe【Optical Flares】で紹介しているので、こちらを参照頂きたい。

 
※配布する本サンプルプロジェクトは、製品の使用時の参考としてご利用頂けます。複製、及び転用、販売、公開、譲渡などはできません。
 
次章のご案内

【世界観を創る!プラグイン活用術/佐藤隆之氏による After Effects プラグイン解説 〜 The Moment of Beauty チュートリアル 〜】、次章はいよいよ最終章、 Plexus と Magic Bullet Looks などを紹介致します。ご期待ください。


第一章 作品と世界観を作るフローの紹介(公開中)
 #01:自己紹介/The Moment of Beauty の裏側
 #02:ワークフローとスタイルフレーム
 #03:制作プロセスと使用プラグイン
 #04:世界観を作り上げていく過程/Cinema 4DとAfter Effectsの連携


第二章 粒子で創る世界観(公開中)
 #05:Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1
 #06:Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2


第三章 光と面で世界を彩る(公開中/本ページ)
 #07:Trapcode Mir の面で世界観を彩る
 #08:Optical Flares の光で世界観を彩る


第四章 カラーグレーディングによる世界観の選択(公開中)
 #09:Plexus で作る空想のオブジェクト
 #10:佐藤氏が Magic Bullet Looks を使う理由

 
TAKAYUKI SATO a.k.a OTAS
解説:佐藤隆之 氏
TAKAYUKI SATO a.k.a OTAS

モーショングラフィックス・VFXアーティスト。1978年千葉県生まれ。99年専門学校を卒業後、イメージスタジオ109、ユナイティア(現IMJ)を経て、04年渡米、ロサンゼルスの美術大学でモーショングラフィックを学び、アメリカの映像プロダクションに就職。その後プロローグ・フィルムズにて映画のタイトルシーケンス、ビジュアルエフェクツ、テレビコマーシャル、番組用グラフィック制作などを手がける。最新作は映画「オブリビオン」(タイトルロゴとエンディング)、「G.I.ジョー バック2リベンジ」(オープニング)。ほか「トータルリコール(2012)」「アイアンマン2」「マイティーソー」のメインタイトルアニメーター、「ランゴ」タイトルシークエンスアニメーター、「バトルシップ」デジタルアーティストなど。
Webサイト:http://otas.tv/jp/
 
布、水面 ─── ポリゴンベースの3DオブジェクトをAfter Effectsで生成するプラグイン【Trapcode Mir】