【世界観を創る!プラグイン活用法】第一章 作品と世界観を創るフローの紹介

世界観を創る!プラグイン活用術

佐藤隆之氏による After Effects プラグイン解説・全四章

〜 The Moment of Beauty チュートリアル 〜

 
第二章 粒子で創る世界観
 

佐藤氏が創る繊細な世界観は
プラグインでどう作られるのか?
佐藤氏の Particular 活用法に迫る

道具は同じでも、アーティストによって作り上げられる世界観は様々 ───。
例えば、同じ一つのパーティクルや、光を用いるにしても、作品によってその使用目的や、メッセージが同じことはない。
更にアーティストの好みや、持ち味が違えば、ソフトウェアのパラメーターの組み合わせは無限、表現の仕方も限りないといえるだろう。


モーショングラフィックス・VFXアーティストの佐藤隆之氏の作品【The Moment of Beauty】を見ると、その表現方法で際立つのは、圧倒的な繊細さだ。この繊細さはどのように生み出されるのだろう?


この【The Moment of Beauty】の創作過程を紐解く本解説、第二章で注目するのは、その繊細な世界観を構築する上で大きな要となるツール、パーティクル生成プラグインの【Trapcode Particular】だ。この Particular は、作品の全編に渡り多用されているが、解説から、その一つ一つのパーティクルオブジェクトは、比較的シンプルな複数の Particular のアニメーションを堅実に組み合わせて作られていることが判る。


佐藤氏はそのパーティクルの繊細な表現を、Particular からどのように引き出しているのか? 佐藤氏の Particular 活用法に迫ってみる。

 

#05 Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1

Particular でここまでできる!

プラグインの活用例、デモンストレーション第一弾は、Trapcode Particular 。

佐藤氏の作品【The Moment of Beauty】では様々な形状のパーティクルが使われているが、その全てが Trapcode Particular によって作成されている。
この佐藤氏の繊細なパーティクルは、Particular の数あるパラメーターをどのように組み合わせて作ってるのだろう? また佐藤氏が日頃活用する、Particular のパラメーターやその設定は何であろう?
解説ビデオをぜひご覧頂きたい。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1:Particular の作例1

今回解説に取り上げたのは、女性の足下から光の球が一直線に伸びる引きのバックショットである。


左側の画像が、このシーンで登場する全てのパーティクルだ。このショットでは、画面の様々な場所でパーティクル(光の粒子や湯気のような煙)が発生し、シーンが無数のパーティクルによって構築されていることが判る。またこの様々な形状のパーティクルを見るだけで、Particular に様々なバリエーションを持たせられることが判るだろう。


そして右側の画像が、今回 Particular の作例としてピックアップしたパーティクルオブジェクトだ。解説では、このシーンの中心に連なる光の球から発生するパーティクルの作成方法を紐解いていく。


(尚、今回作例として紹介する Particular のオブジェクトは、設定を判りやすくするため、Particular の粒子の大きさを実際に使用したものよりも若干大きくして作成している。また本webサイトで紹介する画像も、粒子の状態をより判りやすくするためコントラストを強めにしたものを使用した)

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1:Particular の作例2

作例の Particular のオブジェクトは、3つの Particular のアニメーションを重ねて作成されている。この一つのパーティクル オブジェクトをきちんと作り上げた後、最終的にライトの数に応じて複製すれば、この一連のシーンを作成できることになる。


佐藤氏のパーティクル作成方法で注目したい一つが、普段、粒子のサイズ(Particle>Size)を、最終的に小さく、値を1〜0.5程度で使うことが多いことだ。これにより粒子の動きをより繊細に表現できることになる。但しこの場合、粒子が見えづらいため、時々画面のサイズ100%、画質をフル画像でチェックする必要があるとのこと。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1:Particular の作例3

Particular ビデオ解説 Part1 の主な機能紹介で、特に注目したパラメーターは、Particular の Aux System だ。
Particular に慣れてくると、この機能がとても便利なことが判る。
Aux System>Emit>Continuously(連続して)にすると、一つの粒子から別の粒子を連続して派生させることができる。(図1)
この派生する粒子を増やす(Aux System>Particles/secの値を増やす)と追随する粒子は線のようになり、結果パーティクルの軌跡を描くような表現が可能だ。(図2)
更に粒子から伸びる線を細くする。Aux System>Size で調整。(図3)
また粒子から伸びる線を長くする。Aux System>Life で調整。(図4)
そしてこの粒子から伸びる線を歪める。Physics >Air>Turbulence Field>Affects Posion で調整(図5)といった表現ができる。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1:Particular の作例4

また Particular は、粒子の消え方を自由に設定できる。デフォルトでは、粒子はパッと消えるが、これを滑らかに消えていく(フェードアウトの)設定は、Particle>Opacity over Life のカーブで調整する。(図6)
更に、粒子がチカチカ点滅しながら消えていくといった表現も可能だ。(図7)


尚本解説では、Particular の各パラメーターの設定方法は、簡潔な紹介にとどめ、佐藤氏なりの活用法に重点を置いた。
(Particular の基本操作については、緒方達郎氏解説 Effects Recipe【Trapcode Particular】を参照頂きたい)

 
※配布する本サンプルプロジェクトは、製品の使用時の参考としてご利用頂けます。複製、及び転用、販売、公開、譲渡などはできません。
 

#06 Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2

では実際に、この事例のパーティクルを構成する3つの Particular の各パラメーターを見て行こう。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2:Particular の作例5

第一のパーティクルで使用した Particular の主な設定は次のようなものだ。
Emitter>Particle/sec 150。
Emitter>Velocity(速さ)は、20に。あえてパーティクルを、ゆっくり徐々に増えて行く感じを出す(図1)。(この値が100の場合、粒子は速く広範囲に飛び散る)


Physics>Air>wind Y>-10。ここでは少しだけ上に上がって行くイメージで。
この値をマイナスにすればするほど上に上がっていく。風が下から上へ吹き上げるイメージになる(図2)。


Physics>Air>Turbulence Field(Turbulence 乱気流)>Affect Position を0から50に。すると、通常真っすぐ放射状に飛んでいく粒子が、カーブが掛かったような飛び散り方になる。
Physics>Air>Turbulence Field>Evolution Speed を標準の50から0に。佐藤氏はこの値を0で活用することが多いそうだ。


Aux System>Emit>Continuously に。パーティクルの軌跡を作成できる(図3)。Aux System の詳細は、Particular ビデオ解説 Part1 を参照頂きたい。
Aux Systerm>Velocity は0に。この値を上げて行くとラインでなくなり、ぼやっとした軌跡になる(図4)。
Aux Systerm>Opacity は50%に。ラインが繊細になる(図3)。この値が100%の場合、ラインが太くなる(図5)。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2:Particular の作例6

続いて、徐々に上へ昇っていく第二、三のパーティクルで使用した Particular の主な設定をみてみる。


第二のパーティクル、Emitter>Particle/sec を50に。粒子の数は、第一のパーティクルよりも少し減らしている。Emitter>Velocity を0に。この粒子の速さを0にすると拡散しなくなる。(粒子の発生が1点に留まる)
パーティクルの流れる方向を決めるため、Physics>Air>wind Y を-100に。パーティクルが上に昇っていくイメージになる(図6)。第一のパーティクルと比べ、一直線に上へ昇っていく表現だ。

また煙のような感じは、Aux System によるもの。Aux System>Particle /sec を10%から200%に。追随するパーティクルを、第一のパーティクルより多く生成するイメージである(図7)。
更にパーティクルに歪みを出す。Aux System>Physics(Air mode only)>Turbulence Position を50に。オーガニック感が出る(図8)。また、Aux System>Randomness の Life と Opacity を100で調整。ランダムにすることでオーガニック感が増し、遊び心があるような表現になる。


第三のパーティクルの Emitter>Particle/sec は、250に。粒子の数は3つの中で一番多い。これで第二のパーティクルよりもラインが太目になる(図9)。
Physics>Air>wind Y を-100に。第二のパーティクル同様、パーティクルが上に昇っていくイメージである。

Physics>Air>Turbulence Field>Affect Position を25でやや歪める。Physics>Air>Turbulence Field>Scale を55に。0だとほぼ直線だが、若干うねりが出る(図10)。このように第三のパーティクルは、Aux System も使用していない一番シンプルなスタイルだ。


これら作成した3つの Particular のアニメーションを重ねて、一つのパーティクルオブジェクトが完成する(図11)。

 
Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2:Particular の作例7

最後にこのパーティクルのパーツを、実際のシーンに反映させよう。


まずこの3つのパーティクルのレイヤーを、最終シーンにコピーペーストする。
そして3つの Particular のレイヤーそれぞれの Emitter>Emitter Type を、Lights に変更すると、最終シーンで設定していたライトの位置に、Particular の粒子が反映される。


ここまで Particular を使ったパーティクルオブジェクトの制作過程を見て来た。パラメーター設定の詳細は、ビデオを参照頂きたい。また佐藤氏が解説で紹介した Particular のプロジェクトを以下配布しているので、ぜひ解説と併用してお試し頂きたい。

 
※配布する本サンプルプロジェクトは、製品の使用時の参考としてご利用頂けます。複製、及び転用、販売、公開、譲渡などはできません。
 
次章のご案内

【世界観を創る!プラグイン活用術/佐藤隆之氏による After Effects プラグイン解説 〜 The Moment of Beauty チュートリアル 〜】、次章では Optical Flares と Trapcode Mir を紹介致します。ご期待ください。


第一章 作品と世界観を作るフローの紹介(公開中)
 #01:自己紹介/The Moment of Beauty の裏側
 #02:ワークフローとスタイルフレーム
 #03:制作プロセスと使用プラグイン
 #04:世界観を作り上げていく過程/Cinema 4DとAfter Effectsの連携


第二章 粒子で創る世界観(公開中/本ページ)
 #05:Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part1
 #06:Trapcode Particular 佐藤氏の手法 Part2


第三章 光と面で世界を彩る(公開中)
 #07:Trapcode Mir の面で彩る
 #08:Optical Flares の光で彩る


第四章 カラーグレーディングによる世界観の選択(公開中)
 #09:Plexus で作る空想のオブジェクト
 #10:佐藤氏が Magic Bullet Looks を使う理由

 
TAKAYUKI SATO a.k.a OTAS
解説:佐藤隆之 氏
TAKAYUKI SATO a.k.a OTAS

モーショングラフィックス・VFXアーティスト。1978年千葉県生まれ。99年専門学校を卒業後、イメージスタジオ109、ユナイティア(現IMJ)を経て、04年渡米、ロサンゼルスの美術大学でモーショングラフィックを学び、アメリカの映像プロダクションに就職。その後プロローグ・フィルムズにて映画のタイトルシーケンス、ビジュアルエフェクツ、テレビコマーシャル、番組用グラフィック制作などを手がける。最新作は映画「オブリビオン」(タイトルロゴとエンディング)、「G.I.ジョー バック2リベンジ」(オープニング)。ほか「トータルリコール(2012)」「アイアンマン2」「マイティーソー」のメインタイトルアニメーター、「ランゴ」タイトルシークエンスアニメーター、「バトルシップ」デジタルアーティストなど。
Webサイト:http://otas.tv/jp/
 
After Effectsで美しい粒子を操る!パーティクル作成プラグイン【Trapcode Particular】