面で追うプラナートラッキングを使った映像合成方法

小森 幸人 氏による

 mocha Pro 解説

After Effects ユーザーのみなさま、mocha AE をご存知でしょうか?
そうです─── mocha AE は、 プラナートラッキングソフトウェア mocha Pro の機能制限版として After Effects に無償バンドルしながら、高度な映像合成が行えてしまう驚きのソフトです。


まず mocha Pro や mocha Plus、mocha AE は、After Effects のポイントトラッキングとは異なり、面でトラッキングする "プラナートラッキング" を実現します。このプラナートラッキングによって、例えばロトスコーピングで任意のマスクデータを切り出し、動きのある特定の部分を消したり、別素材を貼付けたりするなど、ハリウッド映画でも多用される映像合成を素早く行うことができます。


今回、映像クリエイター による製品解説、クリエイターズ ビュー / Creators' View は、この mocha の基本機能を中心に、様々な映像合成に応用できるテクニックをご紹介致します。解説は、(株)ピラミッドフィルム ピースリーの映像ディレクター兼チーフエディター、小森 幸人 氏です。普段 Autodesk Flame や Inferno をメインツールとするハイエンドの映像制作を行いながらも、トラッキングやロトスコーピングでは mocha が手放せないという小森氏に、その日頃の技をご披露頂きました。


mocha は、実写合成 のお仕事をされない場合、活用される機会が少ないかもしれませんが、mocha AE を眠らせている After Effects ユーザーの皆様も、この解説をご覧頂くことで、きっと新たな演出の可能性を発見頂けると思います。また日頃から mocha をご愛用の皆様は、ロトスコーピングで抜き出したシェイプデータの一歩先の活用方法がご参考になれば幸いです。
では、"面で追うプラナートラッキングを使った映像合成方法" をとくとお楽しみください ───!!

クリエイターズ ビュー/mocha Pro の活用事例 (完成ビデオ)

まずは今回、小森 幸人氏が作成された mocha Pro の活用事例の完成ビデオをご覧ください。

小森氏が解説で使用されている After Effects プロジェクトを配布
本ビデオ解説に合わせて、以下の 【mocha Pro】 評価用プロジェクトをご利用ください。
ビデオ解説にて使用された After Effects プロジェクト(CS6, CC 対応)、mocha Pro のプロジェクト、等関連ファイルを収録します。
そのほか機能詳細、価格、ご注文などは【mocha Pro 製品ページ】

※配布するプロジェクトは、製品の評価のみにご利用頂けます。評価以外の使用、再配布などはできません。

mocha Pro 解説ビデオ:はじめに

mocha Pro は、点ではなく、面で画像を追いかけるプラナートラッキングが特徴のソフトウェアです。
本解説では、mocha Pro、mocha Plus、mocha AE CC の根幹の機能、トラッキングとロトスコーピングについてご紹介致します。

mocha Pro 解説ビデオ1:
プラナートラッキングの基本操作方法 〜 モニタへのはめ込み合成

まずは mocha Pro での、プラナートラッキングの基本操作方法をご紹介します。この基本操作は、mocha Plus、mocha AE CC も mocha Pro に同様です。

mocha Pro 解説ビデオ1 解説ポイント

・プラナートラッキングの基本操作方法
・トラッキングするエリアの指定
・マッピングするエリアの指定
・下段パラメーターのTrack ブロックのセッティングについて
・モニタのトラッキング
・トラッキングの障害物を除外する
・トラッキングデータのエクスポート
・モニタへのはめ込み合成 (After Effects コーナーピン)

■ プラナートラッキングの基本操作方法

mocha Pro を起動 (スタートアップ画面の start をクリック) します。

まずはプロジェクトを設定します。
File>New Project>Import Clip>Choose>から使用するクリップを選択します。
ここでは、c01.mov のクリップを使用します。
Open をクリックしてクリップを開きます。

Project の名前と Location 保存場所を確認します。
Frame Range:フレーム数
Frame rate:フレームレート
Pixel aspect retio:アスペクト比
Separate Fields:フィールドの処理
などを確認、設定し OK をクリックします。

■ トラッキングするエリアの指定

(01:00)

トラッキングしたいエリアは、Create X-Spline Layer Tool を使って囲みます。
スプラインでエリアを指定後、Track Forwards をクリックすると、面でトラッキングするプラナートラッキングが開始されます。

この mocha 独自の X スプラインツールは、非常に使いやすく、特にロトスコーピングに向いています。どうしてもベジェを使いたい人のために、ベジェでの指定 (Create Bezier Tool) も行えます。

また mocha のトラッキングの特徴として、画面の見えない部分まで自動的に追うことができます。

■ マッピングするエリアの指定

(01:50)

続いて、マッピングするエリアを指定します。
(Show planar surface をオンで) マッピングのエリアを表示させ、グリッド (Show planar grid をオン) でパース感を確認しながら、マッピングエリアの四方の位置を調整します。

■ 下段パラメーターのTrack ブロックのセッティングについて

(02:15)

通常のトラッキングでは、デフォルトの設定でほぼ追えてしまいますが、場合によっては Shear を切ったり、Perspective をつけたりすることがよい結果につながるかもしれません。マーカーの点だけを正確に追いたい場合などは、Translation 以外のチェックを全て外すこともあります。

Large Motion:フレームごとに最適な計算をする。
Small Motion:指定した面を正確に追う。
Manual Motion:キーフレームである程度制御できる。どうしてもこのフレームだけトラッキングが外れている、トラッキングが合わないという時に調整することができます。

■ モニタのトラッキング

(03:37)

では実際に簡単なトラッキングをやってみましょう。
mocha Pro の新規プロジェクトに、monitor.mov (モニタ) のクリップを読み込みます。

Create X-Spline Layer Tool を使って、トラッキングしたいエリアを囲みます。Track Forwards をクリックして、トラッキングします。

このトラッキングの注意点は、クリップの途中で、切り出したいオブジェクトの前面を別の障害物 (ここでは指) が通過するところです。mocha Pro のトラッキングも、この指の動きに引きずられてしまいます。

■ トラッキングの障害物を除外する

(04:40)

新たに、除外したい障害物 (指) のスプラインを大まかに描き、トラッキグします (Layer 2)。

続いて、障害物を追えなかった部分に (Add a new keyframe at current position をクリック) キーフレームを打ち、スプラインの位置を調整します。

Layer Controls の (Layer 2の) process スイッチをオフにします。トラッキングが完了しているエリアは、このスイッチをオフにすると、レンダリングの計算を解除できます。

(05:53)

もう一度モニタのスプライン (Layer 3) を描き直します。

Layer Controls にて、モニタのスプラインのレイヤー (Layer 3) を、指スプラインの レイヤー (Layer 2) の下の階層に移動します。
そして Track Forwards/Backwards をクリックして、トラッキング。
これで、レイヤー階層の上になったレイヤーの指定エリアを計算しないということができます。

これは、After Effects や Autodesk Flame などほかのソフトにはない機能だと思います。

(06:37)

続いて、マッピングするエリア (ここではモニタをはめるエリア) を指定します。ぎりぎりよりも少し大きいくらいです。

■ mocha からトラッキングデータのエクスポート

では、この mocha のトラッキングデータを、After Effects に持って行きましょう。Export Tracking Data をクリックします。

ここで表示される Format が、mocha Pro と mocha Plus/mocha AE CC の大きく違うところです。mocha Plus/mocha AE CC は、After Effectsにしかデータを持って行けないのですが、mocha Pro は、Autodesk Flame をはじめ、色々なソフトにデータを出力することができます。
小森氏も主にこの機能を使いたくて mocha Pro を使われているそうです。

今回は After Effects のコーナーピンで使います。After Effects Corner Pin (Support motion blur) を選択し、Copy to Clipboard をクリックします。

■ モニタへのはめ込み合成

(07:33)

After Effects に行きます。

作例のカット5 (c05_kan.mov) をモニタにはめ込んでみます。
モニタのコンポジションにカット5を入れ、 (タイムラインをクリップの先頭に置いてから) カット5に、クリップボードにコピーした mocha のトラッキングデータをペーストします。
モニタに、カット5のクリップがはめ込み合成されます。

あとは指のマスクを作って抜けばOKです。
この mocha Pro で作成したマスクを After Effects で使用する方法は、次の解説でご紹介します。

mocha Pro 解説ビデオ2:
ロトスコーピングで背景から人物だけを綺麗に切り出す方法

mocha Pro のロトスコーピングでマスクエリアを作る方法と、切り出したシェイプデータを After Effects に読み込み、マスクとして反映させる方法をご紹介します。

mocha Pro 解説ビデオ2 解説ポイント

・トラッキングの途中修正を全フレームに反映する方法 (ウーバーキー)
・トラッキングエリアを中心にプレビューするスタビライズ表示
・ロトスコーピングでマスクエリアを作る方法
・マスクエリアの表示確認 (マスクの色付け、マスクのみの表示)
・マスクデータのエクスポート
・マスクデータのインポート (After Effects)
・複数のパーツに分けたマスクの作成

■ トラッキングの途中修正を全フレームに反映する方法

例えば、c01.mov の人物の胸のエリアをトラッキングします。
その後、胸の上の首の部分まで含めるようにポイントを追加してスプラインを拡張したとします。すると、首の部分が画面の外に出ている1フレーム目では、キーフレームが残っているため、拡張したスプラインの形が修正前の首の部分がない形に戻ってしまいます。いろいろトラッキングした後で、このような途中修正を行うとすると、通常その調整は非常に面倒になります。

そんな時、mocha Pro、mocha AE なら、ウーバーキー (enable uber-key) が力を発揮します。

このウーバーキーをクリックして、先ほどと同じスプラインの拡張をしてみます。すると途中修正したキーフレームの状態が、ほかのキーフレームにも反映されるという串刺し的な動かし方ができます。これは非常に便利な機能で、mocha でしか見たことがない機能です。

■ トラッキングエリアを中心にプレビューするスタビライズ表示

(02:50)

Stabilize スイッチは、このスイッチを押したフレームで、表示上画面を止めてくれます。
つまり、スプラインを調整する際に、タイムラインの端から端までわざわざ移動しなくても、ある程度、対象が静止した状態で、スプラインの変形、追いかけの調整ができます。
これも大変便利な機能です。

■ ロトスコーピングでマスクエリアを作る方法

(03:30)

では、c03_fg.mov のクリップを使って、実際にマスクを描いてみましょう。

まず膝下のトラッキングデータを作成します。足のマーカーと膝下の足全体をざっくり囲んで、トラッキングします。
この Layer 1 のトラッキングデータを使って、ロトスコーピングをしていきます。
Layer Controls パネル、Layer 1 の process スイッチをオフ、非表示にします。

続いて、実際にマスクとする膝下のエリアを描きます。
この 膝下のマスク Layer 2 に、最初に計算した Layer 1のトラッキグデータをリンクさせます。
Link to track 項目をクリックして、Layer 1を選択します。すると新しく描いた Layer 2のスプラインに、最初に計算した Layer 1のトラッキングが適用されます。

(05:22)

このように一つのトラッキングデータを、複数のレイヤーに適用することができます。トラッキングが反映されたスプラインを確認して、少し外れているところを修正していきます。

■ マスクエリアの表示確認 (マスクの色付け、マスクのみの表示)

また確認のために選択した範囲に色をつけることができます。任意のレイヤー Layer を選択した状態で、Layer Controls パネル の Layer 名 の色パレット (Fill Color) を変更します。

更に、Mattes / Colourise layer mattes スイッチをクリックすると、切り抜いたマスクエリアだけを表示することもできます。

■ ロトスコーピングでマスクエリアを作る方法 (膝上)

(06:10)

膝から上の部分も調整します。
足のマーカーと膝上の足全体を囲みます。
トラッキングの範囲を設定したキーフレームの前後をトラッキング。
Layer Controls パネルの process スイッチをオフにし、レイヤーを非表示にします。

膝上のマスクを描きます。
このマスクレイヤーを、Link to track で、トラッキグしたレイヤーにリンク。
マスクエリアのスプラインにトラッキングの動きが適用されます。
トラッキングが合わない部分を調整していきます。
色をつけます。

■ mocha からマスクデータのエクスポート

(09:50)

では、この mocha のマスクデータを、After Effects に持って行きましょう。

今度は、トラッキングデータではなく、シェイプデータのエクスポートになります。Export Shape Data をクリックします。ここでもエクスポートできるのは、mocha Plus/mocha AE CC では After Effects のみですが、mocha Pro では、Nuke や Final Cut Pro など様々なソフトにデータを持って行けます。

After Effects の場合は、mocha shape data for AE を選択。全てのレイヤーを持って行きますので All visible layers を選択。Copy to Clipboard をクリックします。

■ After Effects でマスクデータのインポート

(10:34)

After Effects に行きます。
c03_fg.mov のクリップでコンポジションを作成します。
After Effects メニューの編集>Paste mocha mask を選択。すると、c03_fg.mov のクリップに、先ほど mocha で作ったマスクが適用されます。

このマスクは、After Effects の通常のマスクと同様に、境界のぼかし、マスクの拡張といった調整を普通に行えます。

マスクのエリアを再度調整したい場合は、After Effects では全フレームにキーフレームがついてしまいますので、mocha Pro に戻って作業する方がよいと思います。

■ 複数のパーツに分けたマスクの作成

(11:30)

mocha Proのセットアップ、最終的には、複数のパーツに分けたマスクを作成しています。トラッキグポイントも一つづつ追いかけていますが、基本は一度追ったデータを Link to track を使いながら描いて行きます。この Link to track によって、非常に早く簡単に、多くのマスクを作ることができます。

尚、mocha を使い始めると、ソースクリップがあるディレクトリに Results というフォルダが自動的に作成され、自動的にプロジェクトが保存されます。またプロジェクトを閉じる時は、保存するか必ず聞いてきます。手動で保存するには、プロジェクトを選び、save ボタンをクリック、Replace (上書き) で保存ができます。

mocha Pro 解説ビデオ3:
動く人物にロゴや2Dオブジェクトを貼付け、追随させる方法

動く人物の肌にロゴを貼付ける方法と、動く人物の任意のポイントに2Dオブジェクトを追随させる方法をご紹介します。

mocha Pro 解説ビデオ3 解説ポイント

・mocha でマッピングするエリアを作成
・トラッキングデータのエクスポート
・After Effects で人物にロゴをマッピング
・Red Giant Warp の RG Corner Pin を使ったマッピング
・人物のマーカーのトラッキングデータを作成
・人物の動きに合わせて2Dオブジェクトを動かす
・途中で消えてしまうマーカーのトラッキング処理方法
・人物の動きに合わせて動く2Dオブジェクトを別のアニメーションの動きにリンクさせる

■ mocha でマッピングするエリアを作成

では、動く人物の肌に、ロゴを貼付けてみましょう。まず mocha でマッピングするエリアを作成します。

mocha Pro を起動し、トラッキグするクリップ、c05_fg.mov を開きます。
Create X-Spline Layer Tool を使って、トラッキングする面、肩のマーカーを囲みます。
Track Forwards をクリックして、トラッキングします。

Show planar surface をオン、マッピングする範囲を表示。
Show planar grid をオンし、グリッドを表示。
グリッドでパース感を確認しながら、トラッキングした面に対し、マッピングする範囲の四方の位置を調整します。

(01:45)

mocha Pro でやるとなんでもないことですが、After Effects や Autodesk Flame など (ポイント トラッキングのソフトウェア) でこのマッピングの範囲指定を行う場合、マーカーの周囲だけでも最低2点〜4点追わないと、mocha と同じような正確なパースの変化をつけることはできません。
点を追うのではなく、面を追うプラナートラッキングだからこそ、さくっとできてしまう訳です。

■ トラッキングデータのエクスポート

このトラッキングデータを After Effects に持って行きます。Export Tracking Data をクリック。
今回は、Red Giantの RG Warp を使ってマッピングを行います。
After Effects Corner Pin [corner pin only, supports RG warp and mochaimport] を選択して、Save をクリック、テキストデータを保存します。

■ After Effects で人物にロゴをマッピング

(02:33)

After Effects、c05_fg.mov でコンポを作成。
マッピングするロゴデータ creators_view_logo.psd を読み込み、トランスフォーム>コンポジションに合わせる〜をしておきます。
ロゴのレイヤーに、Red Giant Warp>RG Corner Pin を適用。
RG Corner Pin パレット、Mocha Import>Load To Pins で、mocha で作成したテキストデータを開きます。

肩にパースがマッチしたロゴが張り付きました。
ただし、ロゴの方向が作成意図と異なります。

■ Red Giant Warp の RG Corner Pin を使ったマッピング

(03:08)

このような場合、RG Corner Pin を使うと、回転や縮小拡大などマッピングの位置の調整をとても簡単に行えるので便利です。

ロゴレイヤーの描画モードを背景に対し、オーバーレイで重ねます。
更に、エフェクト>ブラー&シャープ>ブラー (滑らか) で少しだけぼかします。

これで、動く人物の肌にロゴを貼付けるマッピングができました。

(03:48)

今度は、動く人物の任意のポイントに2Dオブジェクト(直線の棒) を追随させる方法をご紹介します。

■ 人物のマーカーのトラッキングデータを作成

まず2Dオブジェクトを追随させる任意のポイントを抽出します。
mocha Pro に戻って、先のトラッキングデータを非表示。
肘のマーカーをトラッキングします。
Create X-Spline Layer Tool を使って、肘のマーカーを囲み、今回はTranslation 以外のチェックを外してトラッキング。

トラッキングが完了したら、Export Tracking Data をクリック。ここでは、Transform Data だけを使います。
After Effects Transform Data [anchor point,position, scale and Rotation] を選択して、Copy to Clipboard をクリックします。

■ 人物の動きに合わせて2Dオブジェクトを動かす

(05:10)

では、 After Effects で腕の動きに合わせて2Dオブジェクトを動かしてみましょう。

After Effects で、先ほどのコンポに線のオブジェクトを乗算で重ねます。
この線のレイヤー、タイムラインを先頭にして、mocha Proのトラッキングデータをペーストします。
線のレイヤーのトランスフォームに、トラッキングのキーフレムが打たれます。
しかしアンカーポイントにもキーフレームが打たれているため何も起きません。

今回は位置情報しか使いませんので、使用しないアンカーポイント、スケール、回転のキーフレムはリセットします。
すると、肘のマーカーに合わせて、線が動き出します。
線のアンカーポイントを調整して、線の端を肘のマーカーに合わせます。

■ 途中で消えてしまうマーカーのトラッキング処理方法

(06:10)

mocha Pro に戻り、手首のマーカーをトラッキグします。
Create X-Spline Layer Tool を使って、手首のマーカーを囲み、Translation 以外を消します。そしてトラック。ただし、手首のマーカーが画面の外に出た時点で、追えなくなってしまいます。

通常の合成であれば、見えるところから追えればよいですが、今回は、クリップの最初から、手首とロゴモーションを線でつなげたいので、手首のマーカーが隠れている時もある程度動きを追わなければならない、ということになります。

(07:00)

その処理方法として、今回は手首のマーカーが追えなくなって時点で、その手首のスプラインを、肘のマーカーに移動し、追い直します。

すると、スプライン上は、おかしな動きになりますが、結果を見ると、消えた後も追っている訳です。追っている場所が違うので、多少動きは変わってしまいますが、雰囲気としてはよいのではないでしょうか。

■ 人物の動きに合わせて動く2Dオブジェクトを別のアニメーションの動きにリンクさせる

(07:55)

After Effects に戻り、肘での設定と同じように、mocha から書き出した手首のマーカーのトラッキングデータを、After Effects の線のレイヤーにペースト。位置情報のみを残し、アンカーポイントを合わせます。肩のマーカーも同様に設定し、3本の線を腕のマーカーの動きに追随させる設定ができました。

ここにあらかじめ作成した mocha のテキストアニメーションを乗せます。そして、腕から伸びる3本線のもう一方の先を、この mocha のテキストアニメーションの動きに合わせてみます。

(09:00)

ここはどのように合わせるのか?
なんと手追いです。
トランスフォームのスケール (X軸)と回転を調整して、キーフレームを打ちます。
これは何故か?
一つはロゴの動きを自由に作りたかったことです。
また、ほかによい方法があるかもしれませんが、あれこれ考える前に手を動かしてしまった方が早いのでは〜という訳です。
この部分は、実は解説ビデオとは思えない方法で作っています(笑)

このようにロゴアニメーションとの接続位置は手追いで設定。これで腕とロゴの動きを線でつないだアニメーションの完成です。

■ 最終イメージ

(10:27)

最後に、背景をマーカーを消したクリップと差し替えます。
このマーカーも After Effects と mocha Pro で消しています。その方法は次の解説ビデオでご紹介します。

尚、このままだと線がやりっぱなしなので、線の先に点の描画を加えています。先に作成した線レイヤーの位置情報をコピーし、点のレイヤーにペースト、アンカーポイントを微調整します。

最終的にカラコレをしたり、画面の歪みを直しカメラに対して正対させました。

mocha Pro 解説ビデオ4:
mocha のマスクデータを活用した一歩先の合成テクニック

mocha のマスクデータを活用した一歩先の合成テクニックということで、動く人物の肌に別の背景素材をマッピングする方法をご紹介します。

mocha Pro 解説ビデオ4 解説ポイント

・トラッキングデータのエクスポート
・動く人物の肌に別の素材をマッピングする
・Red Giant Warp の RG Corner Pin を使ったリポジション
・マスクデータのエクスポートとインポート
・マッピングが重なる部分の処理
・マッピングした部位を、マスクで綺麗に切り取る
・マッピングした部位の質感を出す
・背景の調整 (深度のぼけ、テクスチャ)
・人物についたマーカーの削除

■ mocha からトラッキングデータのエクスポート

解説ビデオ2で作成したロトスコーピングのプロジェクト c03_track.mocha を使って、人物の肌に別の背景素材をマッピングする方法をご紹介していきます。

まず、mocha で作成したトラッキングデータを After Effects に持って行きます。
Layer Controls にて膝下のマスクのレイヤーを選択し、トラッキングデータを書き出します。
Export Tracking Data をクリック、After Effects Corner Pin [corner pin only, supports RG warp and mochaimport] を選択して、Save をクリック、テキストデータを保存します。

■ 動く人物の肌に別の素材をマッピングする

(00:57)

After Effects でc03_fg.movのコンポジションを作成。
背景素材の c03_bg.tif を読み込み、コンポに挿入します。
この背景レイヤーに、Red Giant Warp>RG Corner Pin を適用します。
RG Corner Pin パレット、Mocha Import>Load To Pins で mocha より書き出したテキストデータを開きます。
背景レイヤーが、c03_fg.mov の足の動きに合わせてマッピングされます。

(01:20)

このマッピングを、シーンの開始時に背景と同ポジになるよう調整します。
RG Corner Pin パレット、Mocha Import>Load From Pins で同じテキストを開きます。
すると、c03_fg.mov の足の動きに合わせてマッピングされた背景レイヤーのポジションが正対して、シーンの開始時に背景と同ポジになるように変更されます。

■ Red Giant Warp の RG Corner Pin を使ったリポジション

(01:30)

続いて RG Corner Pin >From Pins のデータを全て消します。
足がはみ出している部分をリポジションします。

Red Giant Warp の RG Corner Pin は、簡単にリポジションすることができます。
Translate Yを調整して、キーフレームを打ちます。
これでマッピングのトラッキングが完了です。

■ マスクデータのエクスポートとインポート

(02:20)

続いて、mocha で作成したマスクデータを After Effectsに持って行きます。

Export Shape Data をクリック、mocha shape data for AE 、Selected layer を選択して、Copy to Clipboard をクリック、シェイプデータをクリップボードに保存します。

背景となる c03_bg.tif で別のコンポを作成、先ほど作成したトラッキング済みのコンポを読み込みます。
そしてこのトラッキグ済みコンポを選択し、(レイヤーにそのままペーストするのではなく) After Effects メニューの編集>Paste mocha mask を選択すると、mocha のシェイプデータがペーストされ、マスクが適用され足の形に切り抜かれます。

(03:00)

背景レイヤーと足マスクレイヤーの間に足のビデオを挿入します。これで動く人物の肌に別の素材をマッピングされたベースができました。

更に、マスクの境界のぼかしや拡張を行い、自然な感じになるよう微調整します。
マスクの境界のぼかし:60 pixel
マスクの拡張:40 pixel

■ 動く人物の肌に別の素材をマッピングする (膝上)

(03:24)

同じ手順で膝上を mocha Pro でトランキング。After Effects にて、mocha Pro のマスクデータから RG Corner Pin を使って、背景レイヤーを足の動きに合わせてマッピングします。

その膝上コンポを、先に作成した膝下のマスクコンポに挿入し、同じように mocha Pro のマスクデータを使って足の形に切り取ります。

■ マッピングが重なる部分の処理

(04:05)

膝の関節部分の重なりが気になるので、ここに新たなマスクを加えています。
丁度背景のビルの構造を使って、なんとなくつながっているように見えると思います。

■ マッピングした部位を、マスクで綺麗に切り取る

(04:45)

もう一度新しいコンポジションを作成します。
ここに背景ビデオ、足の素材ビデオ、マスク合成し境界をぼかした足のビデオを挿入します。
マスク合成し境界をぼかした足のビデオに、更に mocha Proのマスクを適用すると、マッピングした周囲の境界がマスクで綺麗に切り抜かれます。

■ マッピングした部位の質感を出す

(05:13)

奥の足にもmocha Proのマスクを適用していきます。
mocha Proに戻り、奥の足のトラッキングレイヤー Layer 9 を選択、Export Shape Data をクリック、mocha shape data for AE 、Selected layer を選択して、Copy to Clipboard をクリック、シェイプデータをクリップボードに保存します。

After Effects に戻り、足の素材ビデオにペーストします。
足の素材ビデオをもう1レイヤー作り、手前の足と同じマスクを適用、描画モードをハードライトに設定します。
タイムライン、最初のフレーム透明度0>1秒後に100%にします。
これで、足の質感が強調されます。

■ 背景の調整 (深度のぼけ、テクスチャ)

(06:00)

背景レイヤーに Lenscare for AE > FL Out of Focus を適用。足が現れたタイミングで背景がぼける深度を追加しました。

(06:18)

更に背景にガラスの質感をつけています。
ここでは、Optical Flares のテクスチャを使っています。

背景レイヤーの上にテクスチャを挿入、スクリーンで重ねます。背景の深度が移動した時に現れるようキーフレームを打ちます。

■ 人物についたマーカーの削除

(07:20)

最後に足のマーカーを消します。
mocha Pro 単体でも消せるのですが、今回は、mocha Pro と After Effects の両方を使って消してみます。

ここでは、mocha Pro のマーカーをトラッキグしたシェイプデータを使います。
マーカーのトラッキグレイヤー (膝下はLayer 11,12,13) を選択、Export Shape Data をクリック、mocha shape data for AE 、Copy to Clipboard をクリック、シェイプデータをクリップボードに保存します。

After Effects で、背景ビデオ、足の素材ビデオのコンポジションを作ります。
足の素材ビデオに、After Effects メニューの編集>Paste mocha mask でペーストします。

(08:13)

これをプリコンポーズ。プリコンポーズしたコンポをロック。
プリコンポーズの元のコンポを表示、足の素材ビデオの位置をずらします。
トランスフォーム>位置>X を動かして、マーカー部分のマスク内に、近くの肌を持ってきます。これでマーカーが消えました。

マスクの境界を少しぼかしつつ拡張し、違和感をなくします。

■ 最終イメージ

(10:10)

このマーカーを消した足の素材を、最終合成で使用する足の素材と差し替えます。

最終的にカラーコレクションや微調整を行って完成です!

クリエイターズ ビュー/mocha Pro の活用事例 (ブレイクダウン)

以下、本解説でご紹介した mocha Pro の活用事例のブレイクダウンビデオです。

mocha Pro 活用例、サンプルプロジェクトも配布しております!

小森さんによる mocha Pro の解説、いかがでしたでしょうか。
本解説でご紹介した mocha Pro のデモ版やサンプルプロジェクトも配布しておりますので、ぜひダウンロードの上、ご活用ください。
クリエイターズ ビュー、ぜひともみなさまのお仕事のヒントにして頂ければと思います!

解説:小森 幸人 さんのご紹介
多摩美術大学卒業。コナミ株式会社を経て、現在、株式会社ピラミッドフィルム ピースリーにて映像ディレクター兼チーフエディターを勤める。
ディレクター作品:宮野真守 VP&TVCM「M&M CHRONICLE」、GAGA ムービングロゴ、Jasmine TVCM「GOLD」etc…
エディター作品:資生堂 企業広告「美への挑戦篇」、JSR 企業CM「製造篇」、AKB48 MV「君は気まぐれ」etc…
コンテスト受賞歴:
・JPPA Awards 2002 エディターCM部門・シルバー賞
・17th ANNUAL LONDON INTERNATIONAL ADVERTISING AWARDS・FINALIST
・JPPA Awards 2009 エディターVP, MTV, その他部門・審査員特別賞
・Trapcode Creative Award 2013・グランプリ